空のスポーツ
   
   空を飛ぶ飛行機には、たくさんの種類がありますね。大勢のお客様を乗せて飛ぶ大型旅客機から、小型飛行機やヘリ、軍用飛行機、ロケットなどです。
 でも、鳥のように空を自由に飛んでみたいという夢を手軽に実現できるのが、空のスポーツです。その代表的なものをいくつかご紹介しましょう。
   
  気球
   
原理  最もふる古くから行われている空のスポーツです。気球には大きく分けて熱気球とガス気球の2種類があります。ねつききゅう熱気球の原理は簡単です。「あつ熱い空気は冷たい空気よりも軽い」ので、空気を温めてそのふりょく浮力で飛びます。一方、ガス気球は、空気よりも軽いヘリウムやすいそ水素ガスをきゅうひ球皮につ詰めて飛び、熱気球よりもちょうじかん長時間ひこう飛行ができますが、日本ではすいそ水素での飛行はきんし禁止されており、ヘリウムも大変こうか高価なので、国内で飛んでいるのはほとんどがねつききゅう熱気球です。
 
構造

 搭乗者や燃料、器材等を積んで浮揚させるためには、たくさんの熱い空気が必要です。3〜4人を乗せて飛行する場合、約70度の空気で満たされた熱気球の球皮の直径は約17〜18m、高さ20〜25mにも達します。建物にしたらなんと5〜6階建ての高さです。
 球皮の材料には、軽くて丈夫なテトロンやナイロンといった合成繊維が用いられます。また、球皮の開口部は直接バーナーの高熱を受けるので、燃えにくい繊維で作られています。
 搭乗者は、球皮からたくさんのワイアーで吊り下げられた籐製のバスケットに乗ります。
籐は軽くて、着陸時の衝撃を吸収する役目もします。バスケットは通常2〜3人乗りで、燃料のプロパンガス・シリンダーが置けるようになっています。

 
操縦

 気球には舵がないので、自力で横方向には動けません。おもしろいことに風は、高さによって吹いている方向が違います。そこで、バーナーを焚いたり消したりして球皮内の温度を変えては気球の高度を上下させ、自分の行きたい方向に吹いている風を探して飛ぶのです。
 最近では、気球による無着陸世界一周飛行をする人も出てきました。競技会も盛んで、昨年のワールドエアゲームズ(空のスポーツのオリンピック)で優勝するなど、日本選手は世界でも活躍しています
 
 
パラグライディング
 
 ほとんどの飛ぶものは翼の作る揚力で飛んでいますが、違うものもあります。

 気球は浮力で飛びます。風船は手を離すと空に飛んでいってしまいますね。それと同じに、大きな風船に空気より軽い気体を詰めて浮ぶものをガス気球といいます。一方、ガスの代わりに、プロパンガスで温めた熱い空気を大きな風船に詰めて飛ぶのが熱気球です。暖かい空気は上に行くという性質を利用したのです。寒い冬、家のエアコンの暖房をつけても足元がいつまでも寒いことがありますね。これは暖かい空気がみんな上に行ってしまうからです。 

 フランスでスカイダイビング用のパラシュートを斜面に広げて遊んでいるうちに飛び出しちゃった…というのが事の起こりだったというパラグライダーは「空を飛ぶ」という夢をいとも簡単に実現させてくれました。軽くて構造が簡単、折り畳めばリュックに入れて簡単に持ち運びができます。長方形の傘(キャノピー)は、飛行方向に向いて横一列に細かく分かれた袋(セル)になっていて、そこに空気を溜めることにより翼の形を作り、揚力で浮きます。
 スカイダイビングのパラシュートは「高いところから降下するもの」ですが、パラグライダーは風に乗って前進する(つまり滑空する)ところが違います。生まれてまだ20年という新しいスポーツですが、愛好者は日本だけでも80万人と言われています。

 
構造

 パラグライダーを横から見ると翼の形をしています。大きく分けると、ナイロンやポリエステルの布でできた翼部分(キャノピー)とヒモ部分(ラインとライザー)、そしてパイロットの座席部分(ハーネス)の3つに分かれます。キャノピーには空気を取り入れる穴(エアインテーク)が開いていて、空気(風)で内部の圧力を高めることにより翼の形を作ります。ヒモ部分は、パイロットを吊るすためにキャノピーから無数に伸びるライン部と、機体をコントロールするためのラインを束ねたブレークコード、ラインを束ねてハーネスに接続するための帯であるライザーなどがあります。
 
操縦
 地面に広げたキャノピーに風を入れて翼を作り、パイロットの頭上まで持ち上げることをライズアップと言います。ライズアップが完了したら、そのまま風を受けるように走り続けると離陸が完了し空に飛び出します。パイロットは、左右のブレークコードを引いたり戻したりしてパラグライダーを操縦します。上昇気流にうまく乗ると、長く滑空することができます。
 
ハンググライディング
 
 パラグライダーよりも早い1960年代後半から盛んになりました。風の音だけを聞きながら、空を飛ぶ。最も鳥に近い気分を味わえるスポーツです。
 パラグライダーとの違いは骨組みを持っていること。アメリカのNASAが三角形のロガロ翼(ゲイラカイトと同じ形)によるう宇宙船の回収を進めていましたが、このロガロ翼を応用して竹の骨組みにポリエチレンシートを張ったのが、ハンググライダーの始まりです。パラグライダーよりも、航空機に近い性能・構造を持っています。
 
模型航空機
 
 スカイスポーツの中でも、年齢や性別を問わず誰でも手軽に楽しめるのが模型航空機です。実機をそのまま縮小して、飛行機からグライダー、ヘリコプター、ロケットなど空を飛ぶ全てのものの模型があります。
 模型航空機には3つの種類があります。地上から操縦する装置は一切もたないフリーフライト、ワイヤーで地上のパイロットと模型が結ばれているコントロールライン、地上のパイロットが無線によって操縦するラジオ・コントロール(ラジコン)模型です。日本選手は何度も世界選手権で優勝するなど、その実力は世界でも認められています。最近では小学生でも日本選手権で上位入賞する選手も現れてきました。
 
エクスペリメンタル(自作)航空機
 
 自分の思い通りの飛行機を自分で作ってしまおうと考えた人がいます。アメリカを中心に、いろいろな製作キットが販売されています。毎年アメリカで開催される自作機の大会には何千機も集まります。日本でも自分だけの飛行機を何年間もかけてコツコツと作っては、ついには飛ばしてしまう人が何十人もいます。
 
ヘリコプター
 
 ローターを回転させて飛ぶ飛行機で、普通の飛行機と違い、バックやホバリング(空中停止)もできます。競技会では、規定どお通りにいかに正確に飛ぶかを競います。日本選手は世界選手権でも優秀な成績を収めています。
 
グライダー
 
 普通のグライダーにはエンジンがありません。小型飛行機に引っ張ってもらったり、ウインチと呼ばれる巨大な糸巻きのような装置を使って上空までひっぱり上げてもらいます。一定の高度に達したら引っ張られている綱を切り離し、上昇気流を捕まえながら飛行します。グライダーは普通の飛行機に比べると翼がとても長くできているため、長い時間、滑空することができます。
 上昇気流は山のような大きな障害物に風が当たっても生まれますが、一般的には地上と上空の温度差が大きな場所に発生します。上昇気流のありかは積雲を探せばわかります。
  エンジンを付けたグライダーもあり、モーターグライダーと呼ばれます。
 
小型飛行機
 
 小型飛行機の競技会もいろいろあります。プロペラが一つしかない小型飛行機で何度も給油しながら世界一周してしまう人もいます。また、エアロバティックス(曲技飛行)は、1機または何機かで編隊を組んで宙返りなどのアクロバット飛行をするスポーツで、エアショーの人気者です。
 
スカイダイビング(パラシューティング)
 
 「高い所から落ちたらどんな感じだろう」と考えたことはありませんか? それをかなえてくれるのが、スカイダイビングです。背中にパラシュートを入れたバッグを付けて飛行機から飛び出します。パラシュートを開くと、空気の抵抗で落ちる速さをコントロールできるのです。飛行機からジャンプしてパラシュートを開くまでの自由落下中の降下速度は、時速200kmにもなりますが、実際は体が宙に浮いている感覚になります。その感覚は一度体験したら忘れられないものです。万一の場合に備えて、ジャンプする人はメインのパラシュートの他に、必ず予備パラシュートを付けています。
 高度1000m〜4000mで飛行機から飛び出し、パラシュートを開くまでの数十秒間に空中で何人かが手や足をつないでいろいろな形を作ったり、空中でバレーのような演技をするものや、飛び出してすぐパラシュートを開き、地上の目標にいかに正確に降りるかを競うものなどいろいろな競技があります。近い将来オリンピック種目になるのではないかと言われています。
 
マイクロライト・プレーン
 
 エンジン付きの飛行機で、最も手軽に操縦できるのがマイクロライト・プレーン(超軽量動力機)です。元々は「ハンググライダーにエンジンを付けて飛んだら」というアイデアから生まれたもので、操縦の仕方によって3種類に分かれています。
舵面操縦型:形が一般の飛行機に似ているタイプ
体重移動操縦型:ハンググライダーにエンジン、車輪、座席をつけたタイプ
パラシュート型:パラグライダーにエンジン、車輪、座席をつけたタイプ
 
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